アメリカン・ジゴロネタバレ感想
今日見たのは1980年代のアメリカ映画、アメリカン・ジゴロ。例によってアマゾンプライム特典で無料です。
監督はポール・シュレイダー、男娼である主役ジュリアンを演じるのは、まーこの頃は若い若いリチャード・ギアさんです
アメリカンなのにジゴロ、なんだかミスマッチな語感だなあ、娯楽系の映画なのかな?と思いながら見たら、とんでもなく静かで渋い映画でした。
ささっとあらすじを書いて、早速感想に移りたいと思います。
あらすじ
セレブ専門の男娼、主人公ジュリアン。
彼は人気があるからとリオンと、二人の仲介人の間を行き来し、同性愛者を見下し、仕事にも注文をつけまくる難のある男だった。
彼はある日、仕事の為にミシェルという女性とホテルのバーで会話する。
だが、ミシェルは客ではなく、しかも上院議員の妻というとんでもない大物だった。
人違いだったと気づきその場を去るジュリアンだったが、ミシェルは彼に恋をしていた。
ジュリアンの仕事を知りながら彼に迫り、関係を持ち始める二人。
一方その頃。かつてジュリアンに仕事を依頼した、ライマンの妻が殺害された。
ジュリアンはその濡れ衣を被せられ、警察に追われてしまう。
客や仕事仲間に助けを求めるも、誰も彼の頼みを聞いてくれるものはいない。
ジュリアンは疑いを払い、無実を証明することができるのだろうか。
感想
正直メチャクチャ感想が書きにくいですねこの映画。
最初に書いた通りこの映画は静かで、派手な演出等もない。淡々と事実だけが見せられていくような映画です。ストーリーにも激しい起伏などはないし……
でも面白いんですよね。静かだからこその染み入るような面白さがあると言いますか……魅力が伝えにくい映画であるような気がします。
わかりやすい見どころというとやはり若かりし頃のリチャード・ギアさんが見れるところでしょうか。それも超セクシーな。
彼が演じるジュリアンがほんとかっこいいんですよ。
ジュリアンは地味めなスーツで着飾っており、男娼というよりビジネスマンか何かのように見えるのですが、なんと言いますかね。立ち振舞が優雅で色っぽくて。
あ、この人は男娼ではなく高級男娼なんだな、と言うのが長々と説明されなくてもすっと認識できる。
まあ本物の高級男娼なんて見たことないんですけど。兎に角そう納得させられてしまうような雰囲気が演技から出てるんです。
本人も高級男娼であることに誇りを持っている事が伝わってくるのもいいですね。
紹介人であるリオンとのやり取りからもそうですし、身体と知識の鍛錬を怠らない所もそう。
決定的なのはヒロインであるミシェルに
「なぜおば様ばかりを相手にするのか」
と尋ねられるシーンでしょう。
「女子高生を塗らしたいなら映画の一本でも見れば十分だ。だがマダム達は違う」
「この前の客は三時間かけてようやく濡れてくれた。終わった後の充足感には何かあった。僕の他に、誰がこんなことができる?」
めっちゃかっこいいですよね。自分の技と仕事に自信を持っているからこそ言える言葉だと思います。
彼が法に触れてまで男娼をやるのは金のためだけではない……どんな仕事であれ、誇りを持っている人間はそれだけで惹かれてしまいます。
しかしそんな彼にも落ち目の時が。ライアンの妻を殺した罪を被せられてしまうんですね。
ここからの、高級とは言えやはり男娼という職業の悲しい一面が浮き彫りになっていく流れも綺麗で。
主人公、ジュリアンの感情を描く力がとても高いと思います。
警察から当日のアリバイを尋ねられ、その日は客と寝ていた、と真実を語っても相手のマダムは絶対に認めてくれません。
所詮一夜限りの関係であるジュリアンに、身を切ってまで尽くしてやる義理などないのです。
仲介人の二人も扱いづらいジュリアンを助けようとはしません。
クールで余裕のあった彼も、次第に追い詰められていきます。
このあたりの……ジュリアンには同情しますが、同時に「仕方ない」と思えてしまうような見せ方がなんとも物悲しいです。
やがて彼が殺したという証拠も見つかり、ジュリアンが完全に嵌められたとわかります。
一体誰がジュリアンを嵌めたのか?仲介人の二人?それとも客だったライマン?はたまた浮気を知った上院議員か。
このあたりの真実が見えない、皆疑ってしまうような情報の出し方が視聴者とジュリアンの不安を結びつけてくれます。
だからこそ一貫して味方をしてくれるミシェルがかわいくて仕方ないと言いますか。
彼女も夫人、お年ではあるんですけど……いいヒロインやってるなあと思うわけですよ。
途中夫から関係を断てと言われても、ジュリアンが本格的に警察に追われることになっても、彼に会いに来る。
最後には逮捕されたジュリアンを助けるため、弁護士を雇い、夫との関係も顧みず彼と当日寝ていたのは私だと証言する献身的な愛を見せ、ジュリアンの無実を勝ち取るんですが……
ここの演出がまたぐっと来ます。派手な効果音は何もなし。静かな面会室の中でジュリアンに愛を伝えるミシェル。
「僕がずっと探していたのは君だったのか」と、ガラス越しにミシェルの手により掛かるジュリアン。少しずつ大きくなっていくエンディング曲。そしてエンドロール。
劇的な演出ではないのですが、中盤終盤、身体を重ねながらもジュリアンの為に身を切る人間は居ない。彼のことを愛していた人間は誰も居なかった。
という事実を延々見せつけられてからのこのシーンなので、特別なことをしなくても彼の心の動きがこっちにも伝わってくるんですよね。
付け足すだけが演出ではないと言いますか……最後まで渋くまとめる、映画を象徴するような素晴らしいラストです。
派手なアクション映画に疲れていたり、いつもとは少し雰囲気の違う大人な映画が見たくなったら是非。
人によっては退屈だと感じてしまうかもしれませんが……この雰囲気が肌にあえば絶対楽しめますよ。
「サプライズ」ネタバレ感想 無力な人間ばかりだと思うなよ!見るがいい、これがホラー被害者の可能性だ!
今日見たのは2013年公開のホラー映画「サプライズ」。
一昨年辺りにSNSでその評判を見かけ視聴していたのですが、
いつの間にかアマゾンプライムに追加されていたので再度見て見ました。
あらすじって必要なのかな?という疑問が湧いてきたので今日は軽い紹介だけしてさっさと感想に移りたいと思います。
ネタバレが有るので注意です。
あらすじ
親の結婚記念日で別荘に集まった10人の家族。
楽しい食事会をしていた彼らの元へ謎のマスク集団が集まり、一家を次々と殺害していく。
しかし、そのうちの一人主人公、エリンは幼いころ、狂った父親からサバイバル術、そして戦闘術を叩き込まれた一流の戦士だった!
エリンは家に踏み入ってきた犯人の一人を金的でひるませ、ミートハンマーによる殴打の嵐で物言わぬ死体へと変える。
これが……犯人たちへのサプライズ!一方的な虐殺は、マスク集団とエリンの凄惨な殺し合いへと変わっていく……!
感想
いやー、まあ見る前からわかってはいたのですが、この映画は最高に好みですね。
パニックホラーを見た時に、こんなことを思ったことはないでしょうか。「この被害者たち無力すぎだろ!」「ほらそこだ!武器を奪え!いいからダメージを与えろ!10人がかりなら一人くらい殺せるぞ!やれ!」と。
同じ人間であるはずなのに、一方的にやられるだけの被害者たち。彼らの様子を見ていると恐怖よりも先に怒りが湧いてくることもしばしば……
この映画はそんな不満を100%解消してくれます!
片鱗が見えるのは最初の襲撃シーンから。食事中にボウガンの矢が打ち込まれ、家族の一人が死亡。
当然家族全員が恐怖でパニックに陥るのですが、主人公エリンは彼らとは違い、慌てながらも家族に的確な指示を出します。
まずは机の盾に隠れて家族を落ち着かせ、大広間から玄関近くまで椅子を盾に移動することを指示。
さらに自分は避難する際に暖炉の鉄棒を武器として回収することを忘れません。
家族の一人、ジョックのドレイクがギークのフィリックスに「お前はどういう生活してたんだ!?」と訪ねるのですが、
こちらとしてはエリンにそれを聞いてくれよ!と突っ込まずに入られません。
この後もエリンの行動は止まりません。
肩に刺さった矢を抜こうとするドレイクに、抜かずに止血するよう応急手当のアドバイスをしたり(刺さったものを抜くと出血がひどくなり死ぬ)
敵の侵入を防ぐため扉と窓をロックし、台所からナイフやミートハンマーを回収。
窓から彼女の髪を掴んだマスクマンの腕にノータイムでナイフを突き刺すなど、こいつ只者ではないポイントを次々積み上げていきます。
そしてその異常さが爆発するのが、窓を破壊し、斧を持ったマスクマンが彼女に襲いかかる場面。
倒れた状態から斧の一撃をかわし、男の金的を蹴り上げて動きを止め、膝頭をミートハンマーで叩き割り敵を倒し、極めつけに頭を十数回殴打し、完全に息の根を止めます。
そう、主人公エリンはただやられるだけの哀れな被害者ではない……むしろ逆!犯人共を容赦なく殺戮するこの映画最強の戦士なのだ!
このシーンは本当に大好きで、マスクマン襲撃からのエリン反撃の流れもさることながら、頭を二度殴り動かなくなったマスクマンをさらに追加で十回以上念入りに殴りまくるエリンの容赦なさがマジで最高です。
そして殺した直後にマスクを剥ぎ取り、家族に向かって「顔に見覚えは?」ですよ。
し、しびれるぜぇ~!
こんなの男の子なら誰でも「え、エリン姉さん!一生あんたについていきますぜ~!」とむせび泣きながら懇願せずにはいられません。
エリン姉さんはほんと、どの場面を切っても敵に容赦がないのがかっこいいんですよね。
終盤では金目当てでマスクマンを雇いやがった糞野郎どもフィリックスとジー、そして生き残った二人のマスクマンとエリンの全面対決が始まるのですが、そこでも慈悲はありません。
まずは罠に嵌り脚を負傷したヤギマスクを、ナイフを眉間に突き刺してぶち殺すと
(ここの残心シーンがまたかっこいいんですよね。殺しきれなかった時に備えて斧を構える彼女の姿が本当に様になっています)
斧と紐、岩ブロックを利用して玄関に罠を設置。
電灯を破壊し暗くなった地下室に敵を誘き寄せ、カメラの自動撮影とフラッシュを利用して自分だけが視界を確保。
丸太で敵の顔面を原型がなくなるまで連続殴打。
裏切り者のクソフィリックスは脳みそをミキサーにかけ、その彼女のジーは脳天にナイフを突き立てられ脳天から血をチョコレートファウンテンのごとく垂れ流しながら死亡。
最後にやってきた恋人であり家族殺しを持ちかけた黒幕クリスピアンも、説得に耳を傾けることなく首をナイフで掻き切り、トドメに目玉ごと脳みそにナイフを突き立て殺害。
徹底した私の敵はぶっ殺す精神に僕はもうメロメロです……。
と、こうして書くとホラーとしてはどうなの?グロいだけじゃない?と思われそうですが、それは杞憂というもの。
エリン以外はやはり普通の人間……というかパニックホラーの被害者そのものです。
無力な彼らがマスク集団の手にかかり死んでいく様子や、罠にかかって無残な死に様を晒す場面にはしっかりホラーの文脈で楽しめます。
また、エリンも最強ではありますが、ジェイソン・ステイサムほどの強者というわけではありません。
やはり人間。傷は負いますし、武器を持たない状態では流石に男相手だと分が悪いです。
そうした状況で隠れているエリンが敵に見つかりかけるようなシーンでは音楽・演出相まって非常に緊張感があります。
最強のエリンも……やはりここまでなのでは!?そう疑うような場面がいくつもあって最後まで飽きません。
まあ最終的には館に入った人間はエリン以外皆殺しなんですけどね!
全編通してグロテスクで、ラストのオチは少々ブラックではありますが……それさえ許容できれば十二分に楽しめるのではないでしょうか。
ということで今日は終わりです。最後にアマゾンのリンクをもう一度張って終わりにしたいと思います。では。
貞子VS伽椰子ネタバレ感想 ホラージャンルに留まらないエンタメ傑作映画
貞子VS伽椰子、公開当時自分のTLでも話題になり、気になるな~と思いながら見に行けなかったこの映画。
それがアマゾンプライム会員特典に追加されたという噂を聞き、そろそろホラーを見る気分になったので見てみました。
めちゃくちゃおもしろかったです。
以下あらすじ。映画の物語全部書いてるから注意ね。
あらすじ
大学生の夏美は、ひょんなことから、友人である優里が再生した呪いのビデオを見てしまう。
呪いのビデオを見た者は二日以内に死ぬ。呪いを解くため、大学の講師であり都市伝説研究家の森繁教授の元を訪れる二人。
森繁教授は貞子にあいてえという一心で呪いのビデオを鑑賞し、結果ビデオは本物だと確信。
森繁は霊能力者である法柳に連絡を取り、夏美の除霊を依頼する。
法柳の持つ神社に招かれ、除霊を受ける夏美。最強の悪霊、貞子を呼び出すことに成功する法柳だが、貞子の力は彼女の想像を遥かに超えていた。
貞子は法柳の弟子、そして彼女を止めようとした森繁全員を殺害し、除霊は失敗に終わる。
優里は友人である夏美を助けるため、森繁の著書に記されていた呪いを解く方法の一つ『他人にビデオを見せる』という方法を実行させる。
夏美からビデオを手渡してもらい、自らビデオを見て呪いを受ける優里。
貞子からの電話がかかり、部屋の中に異音が鳴り響く。
そこへ、法柳が死に際に貞子を倒せるのは奴だけだとまで評した、霊能力者常盤経蔵、そしてその相棒である玉緒が現れる。
「貞子、会ってみたかったんだ。ちょっと出てこい。来いよ!」
啖呵を切り、貞子に操られかける夏美を一瞬で鎮める経蔵。呪われた二人に、僅かな希望が見えてくる。
優里からどうやって呪いを解くつもりなのか、と尋ねられた経蔵は、こう答える。
「バケモンには、バケモンをぶつけんだよ……!」
一方その頃。家族の事情で見知らぬ土地へ越してきた女子高生の鈴花は、引っ越し初日、隣の家から不穏な気配を感じる。
同級生の話によると、そこは足を踏み入れたら最後生きては出られないという呪われた家だった。
警告どおり家には近づかないようにしていた鈴花だったが、次第に自分が呪いの家にいる場面や、幼子の悪霊を夢に見るようになっていく。
小学生四人が呪いの家の前で消息を絶ったのを知り、呪いの力を信じるようになる鈴花。
そこへ、件の霊能力者経蔵と玉緒が現れる。そう、彼らが貞子とぶつけると言っていたもう一人のバケモノ、それこそが呪いの家に棲む悪霊、伽椰子なのだ。
下見を終え、これならば呪いを解決できると感じた経蔵と玉緒。
しかし彼らが居ない間に、夏美が貞子への恐怖と死への絶望から呪いのビデオを動画サイトにアップロードしてしまう。
世界中に貞子の呪いが広がっていく……なか、夏美は優里に迫る。
「私は呪い殺されるのは嫌、一緒に死のう優里。皆は呪いで死ぬけど、私たちは自分で死ぬの!一緒に死のう優里!」
そう言い、自ら死を選ぼうとする夏美。しかし、夏美が命を断とうとしたその瞬間、眼前に貞子が現れる。
呪った相手は絶対に自分の手で殺す!
呪殺の邪魔をした者は皆殺しにする。貞子の特性は、たとえ自ら死のうとしても発揮されるのだ。
貞子さえ殺せば、呪いの広がりを止められるかもしれない。
世界を守るため、伽椰子宅へ向かう経蔵、玉緒、優里。
途中、呪いの家へ足を踏み入れてしまった鈴花も加え、パーティは四人に。
経蔵の作戦はこうだ。
貞子に呪われた優里は呪いの家へ足を踏み入れることで伽倻子に呪われ、
伽椰子に呪われている鈴花は家の中で呪いのビデオを見ることで貞子に呪われる。
獲物を取り合った貞子と伽椰子の呪いの力は激突し、お互いを対消滅させる……!
指示通り呪いの家へ足を踏み入れ、呪いのビデオを鑑賞する二人。
現れる貞子と伽椰子……!
ホラー界最強の二人の戦いの火蓋が、遂に切って落とされる!
貞子によって爆発四散する伽椰子。しかし伽椰子も負けては居ない。
家の中ならばどこからでも現れる……たとえ一度破壊されても!リポップして再び貞子に襲いかかる伽椰子!
「どっちも消えねえ!外に出てこい、失敗だ!」
家へと入り、ビデオを囮に伽倻子と貞子を外へおびき出す経蔵。
予め用意しておいた井戸に、伽椰子と貞子を封じ込めるのだ。
二人の呪いをその身に宿し、井戸へと身を投じる優里。呪いの余波から玉緒と鈴花を守るため、身を挺して盾となる経蔵。そして、優里を追い井戸へと飛び込む貞子と伽椰子。
最後に残った鈴花が井戸へ蓋をし、伽椰子と貞子、最強のバケモノは遂に封印されたと思われた……
しかし、再び井戸の中から異音が。
「混ざり合ってる……!」
怯える玉緒。破壊される封印!そして出てきたのは……!
言葉通り融合し、貞子と伽椰子二人の特徴を持った新たなモンスターだった……!
絶叫する鈴花と玉緒、そして新たなモンスター貞伽椰の顔がアップで映し出され、エンドロール。
世界へ広がった呪いを解くこともできず、主人公チームは全滅。
最後にパワーアップした呪いのビデオが流れ、バッドエンドでこの映画は幕を閉じる。
感想
この映画を見る前、私のTLでは「さだかやは百合映画だ!」とか、「いいや能力バトル物だよ!」だとか、はたまた「さだかやは劇場版仮面ライダー」などの感想が見受けられた。
こいつらは何を言っているんだろう……と思うような意見もあったが、まさかそれら全てが真実だとは思わなかった。
優里と夏美の関係は間違いなく百合だし、二人の女性の行く末を巡って戦う貞子と伽椰子の関係も、見ようによっては百合だろう。
貞子、伽椰子の最終決戦。お互いのルーツの違いから異なる怪異、そして強さで相手を破滅させようとする様は確かに能力バトルと言っても差し支えない。
主人公チーム四人が伽椰子の家へ向かうシーンの絵面は確かに劇場版仮面ライダーに通じるところがあった。
まあ何を言っているのかと私の正気まで疑われそうだが、とにかくそれだけ、この映画には「人を楽しませよう」とする要素が多いのだ。
正直なことを言うと私はホラー映画と言うものがあまり好きではない。幽霊、と言うものが嫌いだというのも多分に有るが、それ以上に
「とにかくお前らを怖がらせればいいんだろう?」という作り手の態度が嫌いなのだ。
いや、人を怖がらせるのがホラー映画の目的だというのは重々理解している。
単に私のような人間に向けて作っているものではないのだろう、悪いのは彼らではなく楽しめない私の方だ。
しかし、とりあえず呪いで人を殺して登場人物を怖がらせ、
怪異がやってくるまでやたらと長い間があり、ドーンと不意打ち気味にドアップの死体や幽霊の顔を写しておけばOK。
デロデロとした音楽を前編流し、ここぞという所で大音量の衝撃音でビビらせる。
演出にこだわりすぎているせいでストーリーは単調でスカスカ。登場人物の動き方も合理性を欠いている。幽霊に関しても、理不尽な存在でさっぱり理解が及ばない。
そういった映画が、何故かホラーだからと許されているような風潮を、どうしても感じてしまうのだ。
しかし、この映画にはそういった甘えや妥協は一切ない。先程言った通り、ホラー、恐怖を演出するだけでなく、質の高いエンタメを提供しようという意識が随所から感じられる。
最もわかりやすいのは、キャラクターの立て方だろう。
例えば、主人公たちに呪いのビデオの存在を教え、その後呪いを解く鍵をもたらしてくれる森繁教授。
通常の作品であれば、彼は主人公周りで現れる最初の犠牲者として、呪いの力に恐怖しながら無様に死んでいくだけのキャラだろう。
しかし、今作では森繁教授は貞子を偏執的に愛し、彼女を見れるなら死ぬことすら恐れないという、超変態的キャラクターとして描写されている。
ストーリーに理解が及ばなくとも、彼が呪いのビデオを受け取ってからの一連の言動のおかしさを見れば、それだけで視聴者は笑みを浮かべてしまうはずだ。
キャラクターの特徴は更に細かい端役にも与えられている。
主人公の一人鈴花に呪いの家の情報を与える女子高生の仲間。彼女は時折言葉に詰まり、タロット占いを好んでいるなど根暗キャラクターとして軽いキャラクター付けがされている。
優里と夏美が呪いのビデオを見るきっかけとなったビデオ屋のアルバイターも、ひと目見ただけで軽率に人に害を及ぼす性格の曲がった無自覚な悪女であることが解る。
こういったキャラクターへの作り込みがあるお陰で、単純な状況説明や雰囲気を出すだけのシーンを見ていても、退屈するということがない。
今挙げた端役への特徴付けは、ハリウッド映画にもよく見られる特徴だ。最近見た映画だとアントマンの冒頭部分にも近い演出が有る。
主人公スコットラングが刑務所から出所し、アイスクリーム屋で働く場面。
ここで彼に注文を行う子役がいるのだが、それが一瞬で「こいつは凄まじい愚か者だ」と伝わってくるデザインをしている。
言動もピッタリだ。
彼はチーズバーガーを頼み、ハンバーガー屋は隣だというと、今度は「熱いものならなんでもいいよ」と舐めた注文をラングに行う。
これにはラングも口調が荒くなる。観客はもちろん大笑いだ。
スコットが仕事に馴染めないということを描写するためのシーンなのだが、特徴あるキャラを投入することで笑いを取っている。
森繁教授のキャラクター付けと同じテクニックが使われていることが解るだろう。
話の転がし方も見事だ。
前半全てを貞子と伽椰子の激突へ向けた前フリとして機能させ、二体の脅威を煽る煽る。
同時に、随所随所で貞子、そして伽椰子の施す「呪いのルール」のようなものも描写していく。
呪いのビデオを見た者は二日後に死ぬ。
邪魔者は始末される。
自殺しようとしても先に貞子が殺しに来る。
呪いの家に足を踏み入れたものも死ぬ。
家に足を踏み入れてから死ぬまでは時間差がある。
悪霊たちは理不尽な存在では有るのだが、決してただ適当に暴れて人を殺すだけの存在ではない。
彼らは彼らの定めた境界の中で怪異を働く存在なのだ、という事実が、視聴者にもわかりやすいようになっているのだ。
霊能者である経蔵も彼らのルールを理解している。彼らのことを甘く見ることなく、不用意にビデオを眼にしたり、呪いの家に足を踏み入れるようなことはしない。
そして今挙げた要素全てが、クライマックス、そしてラストのシーンで遺憾なく生かされているのだ。
貞子と伽椰子が融合するというのは一見突拍子もないように感じるが、上記のルールに照らし合わせれば不自然さはない。
家に踏み入れたものは伽椰子が殺す。ビデオを見た者は貞子が殺す。
では、お互いがお互いを滅することができず、両方の条件を満たした者を殺したい時はどうすればいいのだろう?
そう、貞子と伽椰子二人で一人を殺せばいいのだ。その方法が融合だった。どちらかが消える、両方が消えるという結果より、理に叶っている。
他にも、ラストに繋がる数々の伏線が物語にはいくつも配置されている。見逃せないのはキャラクターに関する伏線だ。
夏美は自暴自棄になり呪いのビデオを世界に流してしまうが、それ以前のシーンで森繁教授がネットでの拡散について言及していたり。
また、初めて森繁教授に相談を持ちかけるシーンでは、夏美が「呪われるくらいなら死にたい」と、後々自殺を試みることをほのめかす言動もある。
他人のために命を張るという優里の性格も全編渡って何度か描写されていたり……
と、こういった数々の伏線は死に際でのキャラクター達の動きに繋がり、その魅力を一層際立てている。
繰り返し見れば、恐らくまた新たな発見があるはずだ。
このように、今作では怖がらせるというホラーの味に、キャラクター物の楽しさや、脚本の流れを追うという楽しさが加わっている
だからこそ今回のような絶望的なラストでもすんなりと受け止めて楽しむことができるのではないだろうか。
ジャンルとしてはホラー。だが、それだけに留まらない魅力が、この映画には詰まっている。
ホラーが苦手という人も、百合、能力バトル、そして仮面ライダーどれかが好きなら、一度見てもらいたい作品だ。
同じく白石さんが監督した映画『カルト』も同じように、様々な楽しさが詰まった作品なので、まだ見ていない人はそちらの方もご一緒に是非。では。
ソフトクリームみてえな甘さは投げ捨てろ!氷よりも冷たい殺人マシーンの心で涼め!ジェイソンステイサム主演映画「メカニック」感想
6月10日。今日もまた暑い日が続きます。
こんな日は冷たくてあま~いソフトクリームなんかが食べたくなるところです。
しかし私にそんなお金はありません。あるのはこのアマゾンプライム会員の権利のみ。
ならばすることは一つ!そうだ映画見よう。できれば涼しい気分になれる映画がいい……。
何処かにないかな……。冷たくてひんやりしていて夏の暑さを和らげてくれるような映画が……
ありました。
よく聞きますよね。冷たい機械の身体に熱い魂
なんてキャッチコピー。
この映画はその逆、人の体に冷たい機械のような心を持った殺し屋アーサー(ジェイソン・ステイサム)が主人公のアクション映画です。
背景で爆発が起こっていてちょっと気温が上がりそうな気配もしますが、
彼のクールな立ち振舞はきっとこの蒸し暑い夏の風を冷やしてくれるでしょう。
それでは軽くあらすじ紹介
あらすじ
「存在すら悟られないこと。それが最上の仕事だ」
主人公アーサーは、正確にそして完璧に仕事をこなす、「メカニック」と呼ばれる殺し屋の一人。
今日も麻薬王を殺害し、友人であるハリーから報酬を受け取る。
「君は完璧だが、一つ足りないものがある。仲間だ。」
ハリーの言葉に苦笑をかえすアーサー。
それから数日後。アーサーのもとに、ハリーを暗殺しろ、という依頼がやってくる。
依頼主は「メカニック」の雇い主の一人であるディーン。
ハリーは金に目が暗み、暗殺計画を横流し。チームを全滅させた。許す訳にはいかないとディーンは告げる。
悩んだ末、アーサーは依頼を受けハリーを車上荒らしに見せかけて殺害。
ハリーは最後に、殺されるのが君でよかったと告げ、記念品である銃をアーサーへ手渡す。
「周到な準備が勝利を招く」
銃にはそう刻み込まれていた。
墓参りの際、アーサーはハリーの息子であるスティーブンと再会する。
父の仇を取るため車上荒らしを見境なく殺そうとするスティーヴンを、アーサーは止める。
その翌日、スティーブンはアーサーに弟子入りを申し込む。
「父は俺じゃなくあんたに全てを教えた。恩返しをしてくれ。父の代わりに俺に」
スティーブンの望みどおり、アーサーは彼を弟子にする。
奇しくもハリーを殺したことが切欠で、彼の忠告を守ることになるアーサー。
しかし、ハリーの裏切りの裏には、ディーンのある思惑があり……?
感想
ということでここからが感想。物語の核心に触れるネタバレもあるので注意してくださいね。
毎度毎度アウトローを演じているステイサムさんですが、この映画ではタイトル通り、その「クールさ」「渋さ」が特に引き立っているように感じました。
感情を激しく表に出すことはなく、終始無表情に……それでいて内に秘めたプライドや熱さなどが滲み出てくるのがよくわかるんです。
スティーブンから仕事をした時の感情について尋ねられる場面や、
死んだはずの男を見つけディーンの裏切りに気づいた瞬間の表情の僅かな変化など、堪りませんね。
冒頭、仕事の後に音楽を聞きながらターゲットの写真を燃やし、仕事の流儀を語るシーンも
「仕事人」感が出ていてOPとしては最高クラスの出来ではないでしょうか。
夏の暑さなど忘れてしまうほどのクールさです。
もちろんステイサム映画特有のアクションは健在です。
序盤では普段より落ち着いたアクションが目立ちますが、後半は弟子のスティーブンも加わり師弟合わせた豪快なアクションを繰り広げてくれます。
特に悪徳教祖を殺したことがバレ、二人でビルから逃げ出すシーンがいいですね。
まるでチョコとバニラの味が同時に味わえるミックスソフトのようです。
二人の関係はハードですがね!
ここでは洗練されたアーサーの動きとまだ少し粗さの残るスティーブンの動きの対比などに注目してみると、より楽しめることでしょう。
また今作はアクションと並ぶくらい、ともすればそれ以上に人間模様に焦点が当たった作品です。
友人を殺してしまったアーサーと、その友人の息子、スティーブンの師弟関係は、見ていてハラハラすると同時に、何か言葉にできない物が込み上げてきます。
感情的で怒りっぽいスティーブンがアーサーには敬意を抱いて素直に従う様子や、認めてほしくてつい無茶をしてしまう場面なども、
王道ながら心を奪われますね。仕事では無慈悲なアーサーの方も、彼に対しては何かと優しげなのがまた……。
ハリーの言っていた仲間が必要だ、という言葉の意味は、仕事だけに限ったことではなかったのかもしれません。
そして圧巻なのはラストです。
最後にはスティーブンが父を殺した犯人がアーサーであると知り、彼の殺害を試みます。
アーサーもスティーブンの殺意を知りながら、それを受け入れる。
「メカニック」と呼ばれた男にも、友人を殺した罪悪感には耐えられなかったのか。
それとも弟子であるスティーブンとの絆がそうさせたのか……
父の仇を取ったスティーブンは冒頭でアーサーがしていたようにレコードを掛け、ガレージの車へ乗り込む。
アーサーの居ない新しい人生へ、彼は走り出したのだ……
……と、思いきや。
車の助手席には一枚の手紙が置かれています。
スティーブが開くと、そこには短く
「お前は間もなく死ぬ」の文字が!
全てを察して笑うスティーブン。そして期待通り爆発炎上する車!もちろん中のスティーブンは為す術もなく即死!
レコードが回ったことでスイッチが入り、隠れ家も大炎上!
そして映し出されるハリーの拳銃。
「周到な準備が勝利を招く」
そう、アーサーは最初から殺されてやる気などなかった。
隠れ家に戻ってきた時点で、スティーブンの死は決定していたのだ……!
最後に映し出されるのは、生き残り悠々とトラックに乗って何処かへ消えるアーサーの姿。
「メカニック」の名は伊達じゃない。友人を殺した罪悪感も弟子との絆も……彼の前では無力なのだ!
この結末には思わず私も大笑いしてしまいました。
映画一つを通して見せてきた、アーサーがハリーに抱いていた友情、そして育まれていった弟子スティーブンとの友情。
それがあるからこそのこのラストの圧倒的なカタルシス!
そう、それでこそジェイソン・ステイサム!
無敵のジェイソン・ステイサムに、大人しい死なんて似合わねえー!
そう叫びたくなる最高のラストでした。
人によっては賛否両論別れるところかもしれませんが……私はこれこそがこの映画の締めに相応しいと思います。
と、そんなアクション映画「メカニック」はアマゾンプライムに加入すると、なんと無料で見れてしまいます!
もう一度リンクを張っておきますので、興味を持った方はぜひご鑑賞してください。
そして一緒にステイサムさん!最高だぜ~!と叫びましょう。それでは!
夏の暑さを暴力で吹き飛ばせ!アマゾンプライムで見れる!視覚的にも涼しいジェイソン・ステイサム主演映画「トランスポーター」感想
六月!夏!気温も高くなり、そろそろホラー映画で涼んでやろうという古典的な考えで映画館に足を運ぶ人も多くなってくるでしょう。
しかし中には、ホラーは怖すぎて無理、あるいは幽霊の存在なんて信じていないので映画だとしても一瞬たりとて見たくないという人も多いはず。
私も今日は血が見たい気分だったので、ホラーは遠慮しておきました。
代わりに今日鑑賞したのは、ホラーの代わりに暑さを殴り飛ばして始末してくれる上、頭部も視覚的に涼しい、夏ピッタリの俳優ジェイソン・ステイサムさん主演映画「トランスポーター」です。
軽くあらすじを書いたあと感想を書いていきますよ!ネタバレ有りだから注意してくれよな。
あらすじ
ジェイソン・ステイサム演じる主人公、運び屋のフランク。
彼には自らに課した三つのルールが有った。
契約厳守、名前を聞かない。そして依頼品を開けない。
しかしある仕事の途中、彼は異変を感じ荷物を開けてしまう。
中に入っていたのは一人の女性、ライだった。
何も見なかったことにして仕事を終わらせるフランク。
そこに、依頼主が追加の依頼を持ちかけてくる。
受諾したフランクだったが、休憩中に荷物は爆発。依頼主は口封じのために彼を殺すつもりだったのだ。
車を壊された怒りで依頼主を殺しにかかるフランク。
そんなこんなでライを救い出したフランクだったが、依頼主は彼らの抹殺を諦めていなかった。
自宅を破壊されながらも、命からがら逃げ出したフランクとライ。
あいつらは俺を殺したと思っているはずだ、もう俺は手を引く。
そう告げるフランクに、ライは言う。
四百人の人間が奴らの手で売りさばかれようとしている、止めるなら今しかない。
迷った末に、フランクは組織と対峙することを決意。
果たして運び屋のフランクは、組織をぶっ潰して四百人の奴隷達を開放することができるのか!
感想
まあ何と言ってもこの映画の見所は全編通してステイサムさんがクソかっこいいことでしょう!
顧客に銃をつきつけられても涼しい顔で契約を守れと言い放ち。
警察に追われても冷静な判断力とドライビング・テクニックで敵を撒き。
刑事に疑われようと平然とシラを切り通す。
敵を殴り殺し、敵に襲われ、逃げ出し、そして女を抱く。
その所作全てがクールでかっこいいんですよ。
さらに洗車の時や仕事を終えた後に見せる、可愛らしい笑顔もポイントですね。
普段の姿が苛烈なだけに、破壊力抜群です。
人間らしさというか……憧れられる存在でありながら、手が届きそうなこの感じ。魅力的なキャラには欠かせませんね。
そしてアクション!
序盤から本作の主題であるカー・チェイスが繰り広げられ、その次は車を爆破しやがった依頼人の家へ殴り込み。その場にいた敵を格闘・射撃その他もろもろで殲滅していきます。
この敵の家に踏み込む際のエントリー方法がまたいかすんですよ。爆殺されかけてからの一連のスピード感も最高なので、是非見てほしいです。
中盤では襲撃からの逃亡、終盤では一度警察に囚われてから再びの殴り込み。このあたりのステイサム無双は本当に最高ですね。
特に、泥でまともに歩けなくなったフロアの中で自転車のサドルをスパイク代わりに、華麗な足技で圧巻共を次々蹴り殺していくシーンが本当にかっこよすぎてやばいです。
キレッキレの動きに脚のスパイクとコンクリートの地面がぶつかり合う澄んだ音と、蹴撃の鋭い音が合わさって爽快感マックスですよ!ロッテの爽より爽快です!
そこから逃げ出した敵を追うためにセスナを強奪、追いついたトラックの中で敵の親玉と戦うことになるのですが、このシーンのアクションもまたいいんですよね。というか良くないアクションシーンがないです。
窓から顔を出せば敵からの射撃を受けてやられるだろうという状況の中で行われる熾烈なハンドルの奪い合い。
一度トラックから投げ出され轢かれたかと思わせてからの逆転など、単に圧勝で終わらない所が最終決戦という感じがしていいですね。
さてアクションも素晴らしいのですが、それに加えて細部に散りばめられたプロっぽさの演出もこの映画の魅力だと思います。
盗難、あるいは顧客の裏切りを防ぐための暗号式のエンジン、仕事の後すぐに取り替えられるナンバープレートなどの車への仕掛けを始め、
依頼を聞いてすぐメモを破棄したり、自宅の水路に逃亡に使うダイビング用の道具が備え付けてあったり。細かい演出が物語を盛り上げてくれます。
脇を固めるサブキャラクター達もいい味を出しています。
特に、序盤ではステイサムさんを追い詰め、後半では彼を助けるタルコーニ警部がお気に入りです。
見た目も老警部として完成されているのに腹の探り合いで発せられるジョークやイカした台詞回しがまた……ねえ!
ステイサムさんを疑っているため台詞回しは少々嫌らしいのですが、その中にも刑事としての誇りが感じられるんですよね。
終盤で仕事の責務よりその誇りを優先してステイサムさんに手を貸す姿は、話が解っていてもニヤリとしてしまいます。
そしてステイサムさんのかっこよさを引き出すために練られたストーリーもかなりよく出来ています。
画面は常に緊張感に溢れ、退屈とは無縁です。一時間半が本当にあっという間に終わってしまうでしょう。
感想を書いている間にもう一度見ていたのですが、やっぱりあっという間でした。もう二十一時じゃん……
最後に、画面によく海が出てくるので涼しい感じも多分味わえます。夏ぴったりですよ夏!
トランスポーターは続編の2、3含めてアマゾンプライム会員になれば無料で視聴できるので興味を持たれたらぜひ鑑賞してみてください!
そして私とステイサムさんのかっこよさについて語り合いましょう!
終わり
ホビット 思いがけない冒険 感想
指輪物語を見ようかなあと話していたら、友人から「ホビットがアマゾンプライムで無料だからとりあえず見れば?面白いよ!」と言われたので見てみたよ。
正直あまり面白くなかったので、今後その友人の映画評は信じないようにしようかなと思う。
下から書いてある感想もネタバレ有りだし割とボロクソに言ってるので苦手な人は注意してほしい。
---
簡単にあらすじを言うと、大昔ドワーフの王国がとんでもねえクソ悪党ドラゴンに襲われて崩壊。
ドワーフの奴らは命からがら逃げ出して王国を取り戻す機会を伺い、遂にその時がやってきた!
さあデカトカゲドラゴンをぶっ殺して祖先の復讐をするぜ~!と意気込んで旅にかかったものの、ドワーフは腕っ節は立つけど頭の悪いおとぼけ脳筋種族。
このままではドラゴンのもとに辿り着く前に全滅してしまうだろう。
そこで人間の魔術師ガンダルフ君は「ホビットの奴ら、小さいし器用だし勇気も有るし、斥候に最適じゃね?」と言って若きホビットのビルボ・バギンズを旅の仲間に加えようと決める。というお話。
とまあ別に仲間に加えるのはいいんだけど、このガンダルフの野郎がマジでクソ野郎で、なんの連絡もよこさずいきなりビルボの家に尋ねてきたと思いきや、
「わしわし!え~?覚えてないの?わしだよ~!?ほら花火打ち上げてたじゃ~ん!旅行こうよ旅~!一緒に~!」
と詐欺集団も真っ青な凄まじく雑な勧誘でビルボを連れ出そうとする。
ビルボが嫌がっても、
「いやお前のためにもなるから!お父さんに恥ずかしくないの!?一緒にいくぞ~楽しみ~!」
と勝手に決めつけて、それでも嫌だと断るとブチ切れて玄関に魔法の文字を残してドワーフ達を勝手に家に招いてくる有様。
現代だったら不法侵入と器物損壊、騒音被害で間違いなくしょっぴかれてる場面なのに。
最悪なのがその後。ガンダルフが招いたせいでビルボの家の中にガンガンドワーフ達が足を踏み入れてくるんだけど、こいつらも話を聞かない。
ビルボの夕食を勝手に食い、食料庫に足を踏み入れてワインやチーズ、保存食を片っ端から食い荒らしていく。お前ら食ってばかりかよ……
結局やってきたドワーフは15人。驚くことに誰ひとりとしてビルボの話を全く聞かない。ほとんど野盗。
食べ終わったあとの片付けで
「ね?こいつらもいい奴らだろ?」
みたいな顔でガンダルフが微笑んでくるんだけど、見てるこっちからしてもビルボからしてもドワーフはファック野郎どもにしか思えない。
この時点で好感度最悪なのに、遅れてやってきたドワーフの王様トーリンは
「おまえ忍びっていうか八百屋ー!こんなやついらね~!」
といきなり罵倒してくる。
いやお前らの旅に付いていくなんてこっちから願い下げだわ……
絶対ビルボもそう思っていたはずだ。俺もそう思う。
なのに、なぜかビルボはドワーフ達の後を追って旅に同行することを決める。
こいつに人の心はない……ビルボ!この物語の操り人形めが!と思い出すのはこの辺りからである。
そしてさらに困ったことに、このドワーフ共、頭が悪く短気な上に、なんと自慢であったはずの戦いにおいても全くと言っていいほど役にたたない。
「細腕~!」「ホビットじゃあ一晩も持たねぇ~!」
とビルボ君を貧弱だなんだのと罵っていた割に、戦いになったら一瞬でやられる。
途中、トロルに盗まれた馬をビルボが取り返しにいくシーンが有る。
ビルボは失敗して危うく食われそうになり、それをドワーフ達が助けて不仲解消!お互い勇気と武勇を称え合ってウィン・ウィンだ!なんて考えていたら、
たった三匹のトロルに十五人のドワーフは手間取り、結局ビルボを人質に取られて負ける。荘厳な音楽が流れ、完全に勝利ムードに入っていたのにも関わらず負ける。
その後オークと出会ったときにも逃げるだけで全然反撃できないし、谷でゴブリンの群れに出くわしたときも為す術なく連れて行かれて死にかける。
お前らそれでどうやってドラゴン殺すつもりだったの!?トカゲか何かと勘違いしてない!?と突っ込みたくなる位弱い。
エルフの王子が「いや絶対無理だから止めろよ……ガンダルフも馬鹿言ってないでこいつら止めろよ……」と言うのも頷ける。
恐らくこのエルフの王はイヤミを言ってくるポジションの人だと思うのだが、それが正論に聴こえてくるくらい、とにかくドワーフ達が役に立たない。
しかも、ビルボへの悪口は終盤に入っても全く消えない。毎回ぼろくそに言うし、
「そんなこと言ってどうせ里に帰りたいんだろ!?どうせついてきても死ぬぞ!関係ないんだからさっさと帰ってよね!」
と面倒くさいツンデレみたいに繰り返してくる。なんでビルボは付いていくんだろう……一応劇中で答えられるが、こいつもとんだお人好し……というかやはり物語に操られているようにしか見えない。
その後ビルボがトーリンを助けて勇気を認められる場面でも、正直勇気より愛想を尽かさなかったほうに感謝したほうがいいんじゃねえかな……と感じてしまう。
延々ドワーフ達の悪口ばかり言ってきたが、正直なところビルボもあんまり役に立たない。
忍ぶ場面では毎回見つかるし、戦いではか弱いドワーフ達以上に役に立たない。知性の方もせいぜいドワーフ達がキレにくくなった位のものである。
頼みの綱はガンダルフしかいないのだが、この人もへそ曲がりで、ピンチの時に限ってドワーフの王、トーリンと喧嘩していてその場にいない。
一行が本当に全滅しかけた時になって漸く出てくるので、許してくれるタイミングを見計らってるんじゃねえのと勘ぐってしまう。
それでも戦闘に限ってはやはり最強なので無碍にすることもできない。困ったおじいちゃんである。
とまあここ迄登場人物の悪口ばかり書いてきた気もするが、もちろんいいところもある。
ガンダルフがビルボに勇気がなんたるかを語るその内容は王道らしく熱いものだし、ビルボがドワーフ達についていく理由も素直にかっこいい。
そして何と言っても音楽がいい。上記の通り登場人物の人格がアレなのでいまいち見せ場のシーンでも盛り上がりに欠けるのだが、場面場面に合った音楽を流されると
「あっ!ここで泣けばいいんだ!」
「きっとここはかっこいいシーンなんだ!」
というのがしっかりと理解できる。
また、映像美も素晴らしい。
旅の間に挟まる遠景のシーンなどはさすがファンタジー映画の王道、金をかけて作ったのだろう。壮大で美しいと素直に感心させられる。
主人公たちの行く手を阻む怪物たちの迫力も凄まじい。ゲームではやられ役が板についてしまったゴブリン、オークなどの下級モンスターでさえ、十分な脅威なのだとわかる。
特に、石巨人が出て来るシーンには驚かされた。ドラクエやFFの勇者たちはこんなものを剣や斧で叩き割っていたのか?と考えると、彼らがどれだけ選ばれた特別な人間だったのかを噛みしめることができる。
当たり前だがドワーフ達がどうこうできる相手ではない。嵐や地震、災害に合った時と同じように、静かに彼らの動きが治まるのを待つしかないのだ。
このホビットは三部作として作られているらしく、一作目はドラゴンのいる城の前にたどり着いた所で終わる。
最後にドラゴンが映るのだが、この場面も絵になっている。金貨の山が崩れ、中で眠っていたドラゴンが瞳を開いた所でカット。
脅威と期待を煽るいいラストだと思う。
この駆け出し冒険者クラスのドワーフ達がどうやってこのドラゴンに勝つのか、まるで想像がつかないのが難点と言えば難点だが。
ここまで長々と書いたが、まとめると一作目は「話は面白くないが、映像目当てに見るならオススメ」といった感じだろうか。
もしかしたら中には十五人のむさ苦しいドワーフ達の中にお気に入りを見つけれる人もいるかもしれない。
散々悪く言ったが中にはビルボを認めるドワーフもいるし、トーリンも最後には真の仲間としてビルボを迎えてくれる。何より、そういう奴らはイケメンだ。
ビルボやガンダルフのことが好きになる人いるだろう。ビルボはおちゃめなところもあるが根はいいやつでドワーフたちよりよほど人格者だ。ガンダルフは戦っている姿がかっこいい。
彼らのうち一人でも好きになった人物がいたなら、第二作目を見るのもいいかもしれない。
それと映画の感想を友人に伝えたところ、「俺が面白いって言ってたのは二作目だよ。一作目じゃないよ。ごめんね」とお叱りを受けた。
次回作がとても楽しみだ。
皆もぜひ二作目に当たる『ホビット 竜に奪われた王国』を見てほしい。
終わり