ぺんすけの感想記

いろいろな物の感想を付けていきます

BLADE 感想 古いヴァンパイア観をぶち壊すスタイリッシュファンタジー・アクション映画

 本日見たのはウェズリー・スナイプスさん主演のアクション映画、ブレイド

 

 自らも半吸血鬼でありながら吸血鬼をぶち殺す、ヴァンパイアハンターブレイドの活躍を描いた映画です。

 

 これがまたキレッキレのアクション映画で、しかもそれに留まらない面白さがあったように思います。非常に楽しめました。

 

あらすじ

 

 主人公ブレイドデイ・ウォーカーと呼ばれるハーフヴァンパイア。

 

 相棒である武器職人、カーティスとともに吸血鬼を狩りながら、母を殺した犯人を追っていた。

 

 彼はある日ヴァンパイアに噛まれた女医カレンを助けたことが切欠で、宿敵フロストへ繋がる手がかりを発見する。

 

 フロストを追ううち、奴の目的がヴァンパイア達の神「マグラ」を復活させ、人類を支配することだと知るブレイド

 

 彼を止めようとするブレイド。だが同時に、フロストはその儀式のために必要なブレイドの血を狙っていた。

 

 ブレイドはマグラ復活を阻止し、フロストを倒すことは出来るのか……?

 

感想

 

 ヴァンパイア、という言葉を聞いた時、多くの場合古ぼけた洋館もしくは城に住む、色白で高貴な服装をした老紳士を想像するだろう。

 

 人里離れた僻地に住み、まだあどけなさの残る少女を魅了し、その血を啜る。静かでしかし恐ろしい怪物。

 

 吸血鬼『ドラキュラ』がもたらした普遍的な吸血鬼観だ。

 

 この映画に出てくるヴァンパイアは、そういった昔懐かしの伝統的なヴァンパイアとは少し違う。

 

 それは開始早々、冒頭のシーンから解る。

 

 吸血鬼達はナイトクラブで派手な音楽に乗って踊り、風体は娼婦やチンピラのようなそれだ。

 

 彼らが啜るのは生娘の血ではなく、スプリンクラーから吹き出す"血のシャワー”。

 

 所狭しと並んだ吸血鬼たちが歓声を上げながら天井から降り注ぐ血を飲み下す様子は、古い吸血鬼観を粉々に破壊してくれる。

 

 思うに、この作品以前と以後とではフィクション全体で見た吸血鬼のイメージも変化しているのではないだろうか。

 

 それを狩るヴァンパイアハンターブレイドの外見もまた凄まじい。

 

 パッケージから解るように、主演ウェズリー・スナイプスは筋骨隆々の黒人だ。メインの武器は十字架や杭、それを打ち出すボウガンなどではなく、改造ショットガン特殊合金性の日本刀

 

 体を覆うのは防弾加工されたプロテクターに、黒いロングコート。どれも現代的でいて洗練された、今風の格好良さがある。

 

 ヴァンパイア映画で、これか!?とがっかりする人も居るかもしれないが、私はむしろこれだからこそいいのだ、と思う。

 

 なにせこの映画の舞台は現代。そこに昔ながらの吸血鬼がいるという方がミスマッチだろう。吸血鬼の姿も、それを狩る物の姿も、時代によって変わって行くのが当たり前だ。

 

 今、現代にヴァンパイアが居たらどうなるか?彼らはどんなふうに暮らしていくのか?どんな脅威があるのか?

 

 古い吸血鬼観に囚われることなく、独自の現代に沿って変化した新しい吸血鬼を描こうという気概が、作品全体から感じられる。

 

 新しい吸血鬼を書く、という気概は作中のストーリーにも反映されているように思える。

 

 それを象徴するのが、ブレイドの宿敵でありこの映画のラスボス、フロストだ。

 

 着崩したシャツにスカした革ジャンを身にまとったラフな格好は如何にも現代の若者と言った風で、言動も野蛮で暴力的。

 

 彼は所詮吸血鬼は闇に潜むもの、人間と共存しなければ生きてはいけない、という他の吸血鬼達の忠告を無視し、血の神を目覚めさせ人間を支配しようと企んでいる。

 

 ここで出てくる、フロストを止める吸血鬼達の描写が面白い。きっちりとしたスーツを身に纏い言動は理知的。己の血統に自信を持っている事が伺える。

 

 彼らは、まさしく今までのステレオタイプな吸血鬼として描かれているのだ。

 

 ストーリーが進むと、彼らはフロストに実にあっさりと殺されてしまう。純粋種として偉ぶっていたのに、弱すぎではないかと思わないでもない。

 

 しかしこれは間違いなく狙った描写だ。変化を嫌う者は、例え強大であっても変化を受け入れた物には勝てない。

 

 言い換えれば、古いものに縋っているようでは、新しいものを取り入れた者達には勝てないのだ、という事を映画を通して語っているのだ。

 

 こうした、古い物が新しい物に淘汰される、という描写は他にも見られる。

 

 相棒であったカーティスは物語途中で死に、ブレイドを支えるポジションは女医カレンへと受け継がれる。

 

 なにより、フロストの末路もその構図に当てはまる。

 

 終盤、彼は古文書を読み解き、血の神「マグラ」の力をその身に宿す。

 

 神となったフロストは腕を切られようが胴を真っ二つにされようが瞬く間に再生し、どんな攻撃も効かない。ブレイドは一度は窮地に立たされる。

 

 そんな無敵の存在となったフロストを殺すのが、女医カレンの作成した吸血鬼用の毒薬

 

 薬を立て続けに注射され、フロストは遂に爆発四散、木っ端微塵になり消滅する。

 

 吸血鬼に変化を求め続け、他の変化を拒む者達を圧倒してきた彼が、血の神という古い力に縋った瞬間、毒薬という科学によって作られた新しい力で敗北するというのは、まさにこの映画を象徴するラストだろう。

 

 勘違いしないでほしいのだが、この映画は古いものを馬鹿にしているわけではない。むしろ、そういったものに対するリスペクトも随所から感じられる。

 

 ブレイドが日本刀という、まさしく伝統的な武器を使用しているのもそうだ。いや、これは単に日本文化が好きだからかもしれないが……

 

 あっさりと死んでしまう吸血鬼の親玉達の言い分も、見ているとかなり的を射ている。

 

 「人間たちとは共存しなければならない」「彼らとの協定を破れば滅びることになる

 

 フロストは吸血鬼のほうが強いのだから、そうはならないだろうと思い込んでいるのだが……

 

 作中ではブレイドだけでなく、彼らの弱点を知るカーティスも吸血鬼達を殺すし、終盤、一人になった女医カレンもニンニクと硝酸銀のスプレーを吹きかけて、吸血鬼の一人を爆散させる。

 

 なによりフロストを殺した毒薬も、女医のカレンが作ったものだ。

 

 弱点を突かれれば、吸血鬼といえど一溜まりもない。戦争になれば、兵器を自由に作れる人間たちに分があるというのは明白だ。

 

 結局はフロストの言い分より、古い純血種達の方が正しかったというのが自然とわかる作りになっている。


 変化を拒んではいけない。しかし、古いものに敬意を払うこともまた、忘れてはならない。そういった教訓をブレイドは我々に教えてくれる。

 

 この映画は本格的なアクション映画だ。主人公ブレイドのアクションは本格的で、他にはないスピード感がある。武器や乗り物のデザインも非常にスタイリッシュで、見ているだけで楽しい気分になれる。

 

 だが、それだけの映画ではない。こういった作品に一貫する信念のような物が感じられるからこそ、ここまでの名作になっているのだろう。

 

 いや、まあ……長々と話したけど正直ブレイドメッチャかっこいいし面白いので兎に角見てほしいです。

 

 マジで格好いいから……終盤の儀式で血を搾り取られたブレイドが復活してからの流れとか本当最高だから……頼むわ……

 

 最後にもう一度リンクを張って今日は終わりにしたいと思います。では。