ぺんすけの感想記

いろいろな物の感想を付けていきます

サカサマのパテマネタバレ感想 あまり趣味に合わなかったので延々文句を言う回

 アマゾンプライムで見れるので、見ました。

 

サカサマのパテマ

サカサマのパテマ

 

 

 正直あまり趣味に合わなかったので、あらすじの後の感想はなんで面白くないと感じたのかをつらつら書いていくことになります。

 

 そういった趣旨の感想が嫌いな人はここで引き返してもらえるとお互い幸せになれると思います。

 

あらすじ

 

 大昔、ある災厄が切欠で、多くの人間と文明が空へと落下していった。そんな世界。

 

 地底人達の王女パテマは、ある日大空洞から地上に向かって落ちてしまう。

 

 その先には下に向かって広がる空と、彼女たちとは重力の方向が真逆の「アイガ人」の少年、エイジがいた。

 

 エイジに助けられ、空に落ちるのを回避したパテマは、徐々に彼と心を通わせていく。

 

 一方その頃、アイガ国の君主イザムラはサカサマ人パテマがアイガに足を踏み入れたことを知る。

 

 イザムラはサカサマ人の居所を聞き出し彼らを殲滅するため、部下を使ってパテマを捕らえようと動き出した。

 

 パテマとエイジ二人の命運はいかに。

 

感想

 

 これからボロクソに文句だけを垂れたいので、良かった点を先に上げておきたいと思います。

 

 ここで褒めたら後は多分締めの文まで延々面白くなかった理由を書いていくので、この後読む人は承知の上で読んで下さい。

 

 他のレビュー・感想でも多くの人が褒め称えているように、重力の方向が違うが故に価値観も違う二人が出会い、お互いの見ている世界を経験することで理解し合うという構図は非常に良かったです。

 

 画面をぐるりと180度回転させて描くことで、視覚的にも「見ている世界が変わる」というのが非常に理解しやすくなっています。

 

 実はアイガ人のほうが地底人であり、エイジ達が見ていた空は偽物の空。

 

 地底の底が割れ、そこから本物の空が広がる、というラストは映像的にも物語的にも美しいと感じました。

 

 総じて言うと「重力がサカサマな二つの世界」という世界観に関する発想と、その世界でどういったテーマを取り扱えばいいか、の素材選択の部分がよく出来た作品だったのではないでしょうか。

 

 ここからボロクソに言います。

 

 素材は良かった、となると悪かったのは勿論調理の仕方になります。

 

 細々とした部分を上げるとキリがないので問題点を大別すると、大体3つの問題があげられるでしょうか。

 

 登場人物に魅力がないこと、および彼らの感情の変化が唐突すぎること、それからリアリティの欠如。

 

 この3つです。

 

 それぞれ順に述べていきたいと思います。

 

 最初は登場人物の魅力の無さ。

 

 最もまずいのは、主人公二人、エイジとパテマに好感が全く持てないことです。

 

 最悪、他のキャラがどんなダメ野郎共でも常に画面に出ているであろうこの二人を好きになれさえすれば、まだ楽しめたと思うのですが……

 

 いいところを探すほうが難しいのではないか、と思う位魅力がないんですよねこの二人。

 

 エイジ君に至っては登場時から駄目です。

 

 彼の登場シーンは地下から空に向かって落ちかけるパテマちゃんを助けるというものなのですが、この時の反応がお前頭のネジ二、三本抜けてんじゃねえのかと思うような反応で。

 

 柵に捕まって空に落ちるのを必死に防ぐパテマさんを見ても、すぐ助けようとせずぽっけーとその様子を観察し、

 

 パテマさんが助けを求めても「何言ってんだこいつ?」と不服気な顔をして、死への恐怖で怯えるパテマさんを置いてのっそのっそとした動きで手を伸ばす

 
 君が手を伸ばしている間にパテマさんの体力が尽きたらお終いなんだぞ……!

 

 人が一人死にかけてんねんで!その危機感のなさは何やねん!と言いたくなってしまいます。

 

 いや、作り手側がどういう意図でこういった描写を行っているかはわかります。

 

 エイジくんからしてみればサカサマに落ちるというのは理解できないことであり、それ故パテマさんの恐怖には気づけない、何故怖がっているのかわからない、というのを描写したいのだと思います。

 

 しかしここで私は、わからないこともあれば、解ることもあるだろうといいたいのです。

 

 「サカサマに落ちる」ということは理解できなくても、「目の前の女の子が何かに怯え、必死に助けを求めている」ことは表情や声色から理解できる筈です。

 

 それにも関わらず、はぁなんやなんやとボケボケイヤイヤ、流されるように救いの手を差し伸べる主人公を、果たして好きになれるでしょうか?

 

 更に付け加えると、授業中、かつて空に向かって落ちていった人間たちが居る、と言うのは描写されていますから、学生はある程度サカサマ人に対する知識を持っているはずです。

 

 にも関わらず空に落ちていくパテマさんの事を見て、彼女がサカサマ人だと直ぐ様理解できなかったのはなぜか。

 

 直接は描かれていませんが、その授業のシーンを見ればおおよそ推測できます。彼は教師陣に目を向けず、ずーっと空を見上げてぽけぽけしています。

 

 そう、彼は授業を真面目に受けていないから、パテマさんが何者かを理解に至るのに必要な知識を持っていなかったのです

 

 この登場時と前後のシーンだけで、主人公エイジは状況判断能力が低く、真面目に学習していない為周りに比べて知識も無く、命の危機に瀕した女性から必死に助けを求められても一度は拒みかけイヤイヤ助けるような倫理観を持っている人間だという描写がなされています。

 

 主人公にあるまじき特徴付けですね。

 

 当たり前ですが、これは狙ってやったものではないでしょう。このシーンは終始ロマンチックな音楽が流れ、所謂「いいシーン」として描写されていますから。狙っているなら、エイジがダメ人間なのだという演出が足りていません。

 

 こんなキャラになってしまっている理由は一つで、「サカサマゆえの世界の見え方の違い」を描こうとしすぎて、それ以外、エイジの人間性に目が行っていないからでしょう。

 

 もう少しエイジというキャラと向き合っていれば、いくらサカサマ人の価値観に理解がいかなくても、危機を察して彼自身も慌てて助けようとするくらいのリアクションは取らせるはずです。

 

 その後も慣れない世界に来て不安げな様子を見せる彼女を、授業だと言って当然のようにほっぽって去ってしまう。

 

 物語が進むとパテマと仲が段々と良くなっていき、「お前を必ず家に返してやるよ!」「お前を絶対に離さない!」等々いいセリフを言うようになるのですが……

 

 この辺りの、エイジ君本人の人格があまり見えてこない台詞回しに加え、それまでの倫理観の欠如がどうしても印象に残ってしまい、いまいち入り込むことが出来ませんでした。

 

 更に見ていただければわかると思うのですが、精神力がとても弱いです。ちょっと危機に陥るとすぐヘタれて絶望してしまう。

 

 特に運動が得意とか機械に詳しいとかそういう強みもなく……

 

 本当になんというか……もっと長所を付けてくれても良かったのでは……と感じずにはいられません。

 

 パテマもあまりいいキャラではないですね……。

 

 王女だから、ということで我儘で少し高慢なキャラ付けがされているのでしょうが、エイジに一応助けられても礼を全く言わずブチ切れるのはまあ……

 

 エイジの対応が悪かったということを差し引いても、礼に欠けた言動だと言わざるをえないでしょう。

 

 彼女自身、エイジと同じでなにか特技があるというわけでもありません。口調は一々強いのですが精神力もさして強くなく、すぐへこたれるなあという印象。

 

 王女らしく誇りある言動を取らせてあげても良かったのではないかなあ。

 

 敵であるイザムラさんも権力側の悪党という以上の描写はされていませんし、全編通して、「こいつ、いいキャラしてるな」と思えるようなキャラが一人も出てきません。

 

 全員が全員、物語が進むのに最低限必要な役割をこなしているだけのように見えます。

 

 次は感情変化の唐突さ。

 

 ですが延々文句を言って気分が沈んできたので、かっこいいステイサムさんの画像でも見て気分を盛り上げたいと思います。

 

メカニック (吹替版)

メカニック (吹替版)

 

 

 ありがとうございました。

 

 では続けていきましょう。

 

 一番わかり易いのは主人公パテマとエイジが友情を抱くシーンでしょうか。

 

 違う世界から来た二人が交流し心を通わせていく、と言うのは王道ですが、その心を通わせる描写が凄まじくおざなりで。

 

 彼らの心が通い合うのは、夜、星空を二人で観た瞬間です。

 

 エイジくんは父の影響もあり空に憧れを抱いているのですが、アイガは空を忌み嫌う宗教観を持っています。

 

 星空を見せても、周囲は誰もその美しさを認めてくれません。

 

 それに対し、初めて星空を眺めたパテマは、「私の好きだった場所よりずっと綺麗」と、エイジのことを肯定します。

 

 パテマはこの世界に来てよかったと思い、エイジも自分と父と同じ物を美しいと思う、パテマに好意をいだく……

 

 とだけ書くといいシーンに見えるのですが、このやり取りを行うのは二人が出会って一日未満

 

 「初めてこの世界に来てよかったと思った」と言っても比較対象が「死にかけ、その後置物に一人置いていかれた」というエピソードだけでは感慨も何もあったものではありません。

 

 そりゃそうなるだろうな!それまでの経験が糞しかないんだもん!

 

 つい数時間前まで「サカサマのお前らなんて嫌いだ!」と言っていたのも相まって、心変りが早すぎる……と思ってしまいます。

 

 エイジくんの反応もこれまた唐突で。空が綺麗と言っただけのパテマに、空を目指して死んだ父親の話それが原因で自分が苦しんでいた経験を泣き崩れながら語り始めるのはいくらなんでも……め、メンヘラ男かよお前は!女性に慣れていないのは解る……だがもっと順序ってもんがあるだろ!

 

 その後、一夜経ってエイジくんは「必ずお前を家に返してやるよ!」と前日彼女をほぼ一日放置して授業に出た冷血人間とは思えないような熱いセリフを披露してくれます。

 

 まあセリフ自体は王道です。うーん、ジェブナイルだねえ~!いいよいいよ!ここまでのミスはまだ巻き返せるよ!頑張ろう!男を見せろエイジ!

 

 と応援してみても、パテマを囚われたら一瞬でレイプ目になり精気を失った顔で学内をふらっふらふらふら彷徨う豆腐メンタルっぷりを披露

 

 おおおおーい!必ず家に返してやるんじゃなかったのかー!お前の決意は濡れたトイレットペーパーより脆いのかー!?しっかりしろよエイジィー!

 

 お偉いさんの悪役イザムラがなにもするなよ?親父と同じで事故死したくなかったらなぁ~と脅しに来るのですが、脅しなんて無くてもこいつは何もしようとしないだろ……完全なる徒労だよ……と少し同情してしまいます。

 

 ここまで作中およそ一日半。いくらなんでも感情の乱高下が激しすぎます。まさに感情ジェットコースターといった様相ですね。

 

 パテマさんの方も、主に恐怖と怒りの感情の変化が凄まじく早いです。

 

 中盤以降、空に落ちることを怯えていたのに、数秒後には身を投げだしてエイジを救おうとする、というシーンが目立つんですよね。

 

 彼のために決意する間があればすんなり受け入れられた気がしますが、そういう描写も特になく。

 

 しかも、物語中盤で慕っていたラゴスという地底人が悪役に殺されていたことが判明するシーンで、彼女は怒るのではなくずっと怯えていました。

 

 その描写を加味すると、自分を捨ててまで行動するような勇気をパテマが持っていたというのは考えづらく、やはり直前になって唐突に心構えが変化したように見えます。

 

 そしてここの辺りの描写が響いているのか、終盤で彼ら二人がようやく同じ景色を見ることが出来た……というシーンでも、「言うて君たち一日と半分くらいしか一緒にいなかったじゃん……」

 

 と、物語の都合でこの子達の心が動かされているようで乗り切ることが出来ませんでした。

 

 何よりこのあたりの感情の動きの唐突さは、「二人の持っていた価値観のズレは所詮短期間で解消できるものだった

 

 と見ることも出来、価値観のズレという作品全体のテーマを軽くしてしまうことにも繋がっているように思えます。

 

 むしろ、その程度の差で人々はいがみ合ってしまっている、彼らのようにすぐ地底人とアイガ人は混じり合うことが出来る、という描写なのかもしれませんが。

 

 それはそれで、大見得を切っていたエイジ君が滑稽に見えてしまうので嫌だなあ、と思います。

 

 最後にリアリティの欠如。とは言えもう数時間記事を書いているのでお腹が空いてきました。フィクションばかり見て私のリアリティも相当に削られてきています。

 

 ということでエネルギーとリアリティを同時に補給できる優れた食品の紹介です。

 

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 グミは現実にあるので最高にリアルです。あと、甘いので沢山エネルギーもとれます。素敵ですね。

 

 では体長も万全になったところで続きを書いていきましょうか。

 

 リアリティの欠如、と言っても、私はサカサマになってる人間なんて居るわけ無いだろ~!万有引力ってもんがこの世にはあんだよ~!幼稚園から出直してきなポンコツ頭どもが~!ギャッハッハー!という夢のない指摘がしたいわけではありません。

 

 サカサマの人間が居る世界にどういう物を配置すればその世界を本物だと思ってもらえるかという視点が足りてないのではないかと思ったのです。

 

 まず目についたのが、地底世界での安全管理に対するずさんさ。

 

 とりわけ、地上へと繋がる「危険区域」への侵入を防ぐのが幾つかのテープだけで道さえ知っていれば移動できてしまうと言うのは、掟を重んじているオサ側の姿勢と比べても大きな違和感があります。

 

 転落防止等の柵もありません。

 

 アイガ側はサカサマ人をラゴスと今回のパテマだけしか認識していませんでしたが、もっと多くの人間が落下してきていてもおかしくないでしょう。

 

 イザムラの目的とするサカサマ人の殲滅というのも、いまいち現実味がありません。

 

 彼らを殲滅しようとする理由が宗教的な、それも「彼らが穢れているから」という薄い物で、賛同する人間が多いとは思えません。

 

 地底に繋がる巨大な穴はアイガが運営する学園の直ぐ側に有るのですが、殲滅殲滅!と言いながらそれを長い間見過ごしているというのも無理があるような……

 

 というか地底世界に一度誰か来てましたよね?あの人はどうやって地底までおりてきていたんですか?あそこまでたどり着けるなら、地底人の情報もすぐ得れたのでは……?

 

 パテマを捕らえるにしても、彼女が空に逃げていくことに対する対策をする素振りもありませんし。彼らの動き全てに本気さが感じられません。

 

 ただパテマを追わせたかったから、取ってつけたように「サカサマ人の殲滅」という目的を設定されただけだったのではないでしょうか。

 

 また、イザムラ以外政務に力を注いでいる人間が見えないのも難点です。

 

 アイガの敷地がどの程度かは殆ど学園とその周囲しか描写されないのでわかりませんが、一国をたった一人が動かしていると言うのはやはり現実的な描写ではないでしょう。

 

 動揺にアイガで暮らしている人々の描写も学園以外だとほとんど無く、ビルの上から見た夜景が広がっている程度。

 

 ともかく、この世界で人間が生きている感じがしません

 

 主要人物以外のアイガ人がどういう生活を送っているのかをあまりまともに考えていないのではないかと思います。

 

 この辺りはキャラクターの魅力の無さにもつながっている気がします。

 

 例えば主人公やイザムラさん等の異常な立ち位置の人達以外、普通の人々がパテマに対してどういう風に接するか、エイジくんとはどう違うのか?

 

 というのを見せてもらえれば、エイジくんの特異性も際立ち、そこに魅力が生まれたのではないかと思います。

 

 

 

 総じて言うとやはり「サカサマの世界が交わり合う」という根幹部分に愛着が湧きすぎて、それ以外の部分がほぼ全てお座なりになったのが問題という事になりそうです。

 

 もう少し中身についてしっかり考えてくれれば……私自身もそのアイデア自体は素晴らしいと思いました。それだけに見せ方が相容れなかったのが残念でなりません。

 

 と上手くまとめたところでおしまいです。一応アマゾンへのリンクを張っておくので、興味がでた方は見てみてください。

 

 もしかしたら私とは違い、十全に楽しむことも出来るかもしれません。実際周りを見渡すと楽しめたという人も多くいます。

 

 そうでなくても見た後にこの記事を読めば少しは気も紛れるはずです。

 

 それでは。

 

 

サカサマのパテマ

サカサマのパテマ